CVCを直接投資で行う場合、組織形態としてはファンドか本体投資かという選択肢があります。どちらもメリット、デメリットがありますが、海外のCVCでは本体投資で行っているところが多いようです。本体投資のメリット、デメリットについては、いろいろなケースがあり一概には指摘できませんが、主に下記のような点が想定されます。
(1) 本体投資のメリット
・新たなエンティティを組成することなく投資をすぐに開始することができる
・CVCチームが親会社の1部門であり、他の部門との連携が図りやすい
・親会社の他の部門との連携からスタートアップへの付加価値を提供しやすい
・戦略リターンおよび財務リターンを親会社が中長期的な視点から独自に設計できる
(2) 本体投資のデメリット
・景気後退、経営陣の交代等があった場合にCVCから容易に撤退する可能性がある
・意思決定プロセスが親会社のそれに準じる場合は意思決定に時間がかかるケースがある
・報酬制度設計における自由度が低い(親会社の報酬制度に準じるケースが多い)
・固定的な報酬制度により優秀な人材を採用、維持するのが難しい
・将来の投資額等について確約がない場合、中長期的な投資方針が不明確になるケースがある
どういう組織形態が最も適しているかはCVCを通じて実現したいことに大きく依存するかと思いますが、親会社の長期的なコミットメント、成功報酬(キャリー)の設定及び優秀な人材の採用、迅速な意思決定等を重視する場合はファンドを選択するケースが多いようです。海外CVCでは下記の(a)→(b)→(c)のように組織形態を進化させるケースもあります。
(a) 本体投資
(b) ファンド組成(二人組合)
(c) ファンド組成(親会社以外のLP出資者あり)
(c)については、親会社以外のLP出資者も含まれており親会社はアンカー投資家としてLP出資することが多いようです。この場合は、GPが親会社の子会社であるケースとスピンアウトして独立しているというケースが考えられますが、後者の場合はGPがかなり高いレベルで独立性を確保し、LP出資者への説明責任を果たしながら、財務リターン重視の通常のVCファンドと同じような形態で運用されることになります。海外においてCVCをファンドで行っている場合に、GPの名称に親会社の社名を使用しないようにして、CVCではなく独立系VCであることを強調するケースもあります。