欧州のあるグローバル企業のCVCでは、スタートアップへの直接投資について2つのグループに分けて実施しているようです。1つはアーリーステージのスタートアップへの小口分散投資であり、もう1つはレイトステージのスタートアップを対象とする協業を前提とした重点投資です。前者の小口分散投資については、主に欧州と南米をターゲットにしています。また、現地のスタートアップを投資対象としたいくつかのVCファンドに主要なLP投資家として参加しています。新しくCVCの取り組みを開始する地域では、比較的新しいVCのファンドへも大口のLP出資をしているようです。現地の社内外のビジネスアイデアを事業化するアクセラレータープログラムとも連携しており、その事業化に深く関与している場合は比較的大きなシェアを取るような投資も行っているようです。このプログラムでは現地のビジネスアイデアをグローバルに展開できるような支援を行っています。また、現在ではベンチャークライアントモデルのプログラムと連携してスタートアップの探索等を行っています。後者の重点投資では、主に米国を中心としたレイトステージで順調にVCから資金調達できているテクノロジー系スタートアップを投資対象としており、大規模な資金調達ラウンドに比較的大きな資金を投資しています。投資の条件としては、財務的に健全であり財務リターンが期待できるとともに、親会社が顧客となりグローバルに親会社の顧客等に提案できる実績のある製品あるいはサービスを提供している成長途上のスタートアップということになります。
上記のCVCの取り組みについて、CVCの観点から下記の点は参考になるのではないかと思います。
(1) CVCの取り組みとして直接投資とVCファンドへのLP出資を併用している
(2) 新しくCVCを開始する地域では複数のVCファンドに主要なLPとして出資している
(3) ベンチャークライアントモデルのプログラムと連携している
(4) 財務リターンの実現を目的の1つとしている
(1)について、VCファンドへのLP出資は特にシード、アーリーステージを投資対象にしている場合はより有効かと思われます。直接投資ではカバーできない分野、地域に関連する情報等をLP出資しているVCファンドを通じて獲得することができます。
(2)については、VCファンドに主要なLPとして参加することにより、GPであるVCとのコミュニケーションが密となり、より詳細な情報入手、投資先の紹介、共同投資機会の提供等を期待することができます。
(3)のように、投資を前提としないプログラムと連携しその情報を共有することにより、ディールフローを拡充することができるとともに、投資先をそのプログラムに参加させることにより付加価値の提供につながる可能性があります。
(4)について、財務リターンの実現を目的の1つとしていることは重要かと思います。重点投資の投資対象については、レイトステージでありバリュエーションも高く想定マルチプルは高くないと考えられますが、大口の投資をすることで財務リターンを確保することは投資を継続する上でも重要であると考えられます。
海外CVCにおけるグローバル展開
