最近、米国の老舗のCVCの親会社がCVCをスピンアプトさせると発表しましたが、その後に就任した新しい経営トップがその方針を撤回しました。このCVCは、ダブル・ボトムラインの方針を徹底し、30年以上にわたってCVCの活動を継続してきました。CVCにおけるダブル・ボトムラインは、戦略リターンと財務リターンの両立と考えてよろしいかと思います。戦略リターンについては、そのときの経営トップの方針の影響も受けますが、下記のを3つを想定してきたようです。
・新たな顧客を創出する
・新たな市場を開拓する
・コスト削減を実現する
これらの戦略リターンは主に短期的な利益に直結するものとして認識されており、コアビジネスのロードマップとの整合性が重視されてきました。ただ、ある経営トップの時には、自社の市場シェアの高い製品の適用領域を広げるようなビジネスへの投資を重視していましたが、それは短期的というよりはもう少し中長期的な視点もあったと思われます。
このCVCでは、ダブル・ボトムラインの柱の1つとして財務リターンを重視してきました。これは通常のVCと同じような財務リターンの実現に必要な強い財務規律に支えられており、明らかにこのCVCが継続できた理由と1つと考えられます。もちろん、それを実現するには、VCに関する高い専門性を持ったチームでCVCが運営される必要があります。
また、このCVCでは投資したスタートアップの成長を第一に考えており、資金を投資するだけではなく、それ以外の付加価値を提供することによりスタートアップの成長の支援しています。投資したスタートアップが成功しなければ、CVCあるいは親会社の成功もないと考えているようです。
今回、CVCのスピンアウトを撤回した現在の親会社の経営トップはVCの実務経験があり、CVCの存在価値を独自の視点でとらえているようです。今後の投資方針については、既存投資先は流動化を推進し、新規投資については選択的に行うと発表しています。経営トップのVCへの理解のレベルがCVCの継続性にかなり強い影響を与えている1つの例ではないかと思います。
上記のCVCが30年以上にわたって継続できた理由の1つとして、ダブル・ボトムライン、すなわち戦略リターンと財務リターンの両立があげられるのではないかと思います。その点も含めて、上記のCVCから想定されるCVCを継続させるために必要な条件は、下記のような点があげられるかと思います。
・戦略リターンを明確に定義する
・財務リターンを重視する
・高い成長が期待されるスタートアップに投資をする
・スタートアップの成長を第一に考え、その成長を支援する
・親会社の経営陣にVC(の専門性)に対する理解を深めてもらう
CVCにおける継続性
