米国では1960年代に大手企業のいくつかがCVCを開始し、VCが儲かるビジネスだと認識され始めた1980年代にCVCは金額ベースでも大きく成長しました。その米国では企業がCVCを行うメリットとして下記の2点があると考えられているようです。
(1) 親会社に財務リターンをもたらす
(2) 親会社が業界の最先端技術あるいは新しいイノベーションの知識を得ることができる
(1)については、通常CVCは親会社が持つ専門知識を生かせる分野あるいはそれに関連する分野に投資をするケースが多いので、優良なスタートアップを目利きする能力が通常のVCよりも高く、そのため投資から財務リターンを得られる可能性が高くなるというものです。また、親会社の経営リソースを使って投資先に付加価値を提供できる可能性もあり、その場合は投資先の成功確率を上げることに貢献できると考えられます。
(2)については、業界最先端あるいは新しいイノベーションとなりうる技術はスタートアップから生まれることが多いと考えられており、CVCを通じてスタートアップに投資することにより社外にあるイノベーションに関するアイデアや知識を把握することができ、それを親会社の事業戦略策定に活かすことができるというものです。
CVCのメリットとして想定されているこの2つの点は国内のCVCにとって参考になる点もあるのではないかと思います。
(1)は財務リターンに関するものですが、国内のCVCでは財務リターンはあまり議論されていないケースもあるのではないかと思います。海外のCVCでは、CVCも事業として財務的に健全であることが事業継続の前提という考えのもと、通常のVCと同じようなレベルで財務リターンに注意を払っているケースが多いようです。米国のあるネット大手では、親会社が持っている豊富なディールフローと社員が持つビジネススキルの両方を、VC投資から財務リターンを得るために活用可能な独自の資産とみなすことができるという認識に基づいて、通常のVCと同じような投資活動するCVCを設立しています。
(2)については親会社の外にあるイノベーションに関する情報を収集するという目的であり、米国ではこのような目的でCVCを設立しているケースは多いようです。米国ではCVCの目的が情報収集の場合はその主管部門は戦略チーム(Corporate Strategy)になることが多いようで、その情報は親会社の事業戦略策定の中で活用されるようです。
海外のあるCVCでは、このように財務リターンを獲得しながらイノベーションに関する情報収集等の戦略リターンを実現する目的でCVCの投資を行っており、そのような投資を “getting paid to learn” と呼んでいるようです。