米国のあるCVCでは下記のような2つの投資チームを持っています。
(1)小口分散投資
・主管部門:戦略チーム
・少額のマイノリティ投資
・取締役は派遣しない
・投資目的は質の良いディールフローにアクセスしハイテク業界の最新動向を把握する
・ビジネスユニットと連携する必要はない(自社と競合するような技術への投資も可能)
(2)重点投資
・主管部門:M&Aチーム
・持株比率20%以上を保有するような規模の大きな投資
・取締役を派遣する
・投資目的は買収の前段階あるいはスタートアップと重要な関係を築く
・ビジネスユニットと密に連携(投資には戦略的適合性が必要)
CVCとしての出資は、株主として投資先の財務情報も含めた内部情報を入手するのに役立つと考えており、(1)については収集した情報が親会社の事業戦略策定に活用でき、(2)についてはM&Aターゲットの事前調査に近いと理解しているようです。
このCVCでは財務リターンについてもかなり重要視しているようです。できれば、CVCチームにキャリーを与えてCVCチームの個人のインセンティブとスタートアップの目標を完全に一致させるのが望ましいと考えているようですが、現段階ではそのようにはなっていないようです。ただ、それが実現できれば通常のVCが投資を見送った高いバリュエーションの案件に投資をするというようなことがなくなると考えているようです。結局、通常のVCファンドのような財務リターン目的の投資家からも投資を受けて成長するようなスタートアップに投資をしないと意味がなく、バリュエーションが高く通常のVCからの資金調達が難航して経営不振に陥るようなスタートアップに投資をしても戦略的な価値はないと考えているようです。
CVCとして投資の目的をどのように設定するかによって、どのような投資をするのかが変わってくるということを考えると、結局CVCを通じて何を実現したいのかということをきちんと定義しておくことが重要であり、それは戦略リターンと財務リターンの両方について明確になっていることが必要であると考えられます。財務リターンは1円単位で定量的な評価ができるため “Financial Return” と考えてもいいかもしれませんが、戦略リターンはそういう評価が難しいため上記の(1)のような投資であるとすると “Strategic Insight” と考えることもできるかもしれません。その “Strategic Insight” をどのように活用できるのかということを、CVCのチームだけではなく親会社も常に考えておくことが重要であると思われます。
米国のCVCの事例
