国内CVCの事例(ファンド投資)

国内のあるCVCでは自社の子会社をGPとしてファンド(二人組合)を組成しており、親会社がブローバルにビジネス展開していることもあり、海外投資も積極的に行っています。このCVCがファンドにした理由としては、ファンドの存続期間(10年)で清算する必要があるため強制的に投資先を流動化し、ファンドのパフォーマンスとして成果(財務リターン)を評価できるからということのようです。投資案件は短期的なシナジー狙いの投資と中長期的なイノベーション狙いの投資に色分けして投資判断しているようです。戦略リターンについては案件毎にKPIを設定し評価しており、財務リターンについてはファンドのパフォーマンスとして評価しているようです。取締役会陪席権(Observation Right)は取るようにしているようですがマストではなく、情報開示請求権(Information Right)は取るようにしているようです。投資時にリードを取るか取らないかは特に特に決めていないようですが、将来M&Aをする可能性のある案件については実際にリードを取ったケースもあるとのことで、その場合は取締役も派遣しているようです。投資時にリードを取るケースは短期的な既存ビジネスとのシナジー狙いの案件になるとのことで、ビジネスユニットと密に連携しながら進めるようです。また、投資先への支援の一環として社員を投資先に派遣したこともあるようです。
米国のCVCを見ていますと、CVCの目的としてスタートアップに関する情報収集に加えてM&Aのパイプライン作りとしているケースも多くあり、その場合はリードを取るケースもあるようです。M&Aを目的としたCVCの投資においてリードを取る理由としては、取締役を派遣してより詳細な機密情報にアクセスできる機会を作るとともに取締役会で議決権行使することにより重要な意思決定に影響を与えるということ、拒否権(Protective Provision)を確保して自社に不利益になるような意思決定はできないようにすること、M&Aに関する何らのかの優先権を確保する等の理由が考えられるかと思います。米国の場合もM&Aが目的のCVC投資は、ビジネスユニットとの連携はかなり密にやっているケースが多いようです。CVCの戦略リターンの1つとしてM&Aを考慮することは出資するという手段から進展する1つの形と考えてもいいかもしれません。