VCとして投資案件が入ってくると、まず自社の投資方針等に照らし合わせてスクリーニングする必要があります。スクリーニングではいろいろな評価のポイントがあるかと思いますが、代表的なものに「人材」「技術」「市場」があります。もちろんこの3つの視点はいずれも重要で最終的な投資の意思決定においてはすべてを包括的に評価する必要がありますが、最初のスクリーニングの段階でどれを特に重視するかはVCあるいはベンチャーキャピタリスト個人でさまざまではないかと思います。米国のベンチャーキャピタリストの草分け的な存在と言われている人たちでも、どの視点に特に着目するかはいろいろな哲学があったようです。このような哲学に基づいて案件のスクリーニングにおいては一貫したスタンスを持つことが、VC投資において成功するために必要な条件の1つと言えるのかもしれません。VC投資にはリスクが伴いますので、上記の視点を考慮すると投資において取るべきリスクとして「人材リスク」「技術開発リスク」「市場リスク」があるとすると、どのリスクを一番取りたくないかという議論と考えていいかもしれません。
「人材」重視のVCあるいはベンチャーキャピタリストは多いと思いますが、特にステージの早い投資ではその優先順位は高くなるのではないかと思います。そのようなステージでは、ビジネスプランの内容よりもそれを誰が策定したのかを重視する人もいるようですし、投資検討のプロセスにおいてできるだけ創業者との時間を確保して人物評価をする人もいるようです。「人材」については多くの評価項目がありますが、以前に話をした海外のシード投資家のVCでは、「人材」の評価のポイントとして “Ambition”, “Transparency”, “Integrity” を挙げており、ビジネス経験の有無はあまり重視していないとのことでした。「人材」の評価においては、人間としての相性の問題もあると思いますが、どの項目を重視するかはいろいろな視点がありそうです。
米国の著名なVCの創業者で「技術」に特に着目していた人のケースでは、「市場リスクは技術開発リスクに反比例する」という独自の考えのもと、最先端の技術を開発して市場で差別化するための競争優位性を高めることができるスタートアップを好んだとのことです。これは積極的に技術開発リスクを取って市場での競争リスクを回避するという考え方ですが、「技術」が競争優位性の実現にどれだけ寄与するかという視点から見ると分野によっても違いがあり、いろいろな考え方がありそうです。
別の米国の著名なVCのケースでは、VC投資のリスクとして市場リスクを最も取りたくないという方針を持ちながらも、大きな市場規模になることが期待される現在は存在しない新しい市場を創出して、そこで支配的な市場シェアを取れるようなビジネスにも好んで投資しているようです。
CVCでは案件スクリーニングの段階で戦略リターンとの関連が出てくるかと思います。どのようにスクリーニングするかは、戦略リターンをどう定義するかによって違ってきます。戦略リターンの実現形態として協業を想定している場合は協業可能性ということが重要な論点になるかと思いますが、これはなかなかハードルが高くここで却下される案件が多くなってしまうとCVCの活動そのものが活性化しなくなる恐れがあります。海外では長期間継続できているCVCでは投資ペースが速いと言われています。米国では協業をCVCの目的としているケースは少なく、社外で起こっているイノベーションを把握する、すなわち情報収集目的でCVCをしているケースが多く、この場合は比較的小口分散投資でいろいろなスタートアップに投資をしています。これらの情報をどのように活用するかは実現したいことによって変わるかもしれませんが、まずはそういう目的でCVCを推進するのも1つの形として考えられるのではないかと思います。
VCの案件スクリーニング
