VCにおける多様性の重要性

以前に米国の著名なVCについて調べていたときに、そのVCではパートナーの出身国が分散するように注意を払っているというコメントがありました。確かにそのVCの当時のパートナーの構成を見ますと出身国が異なっており、当時からパートナーマネージメントにおいて国籍という人口統計学的な多様性を高める努力をしているのが印象的でした。すなわち、このVCのパートナーは移民で構成されているということになります。米国の有名な起業家には移民あるいは移民の娘や息子が多いようですが、移民は2つの文化の中で暮らし多様な経験をしているので、広い視野で物事を考えることができると言われています。これはVCのパートナーについても同様のことが言えるのではないかと思います。ただ、当時はそのVCには女性のパートナーがおらず、その点を指摘されるとそれはたまたまであるという回答でしたが、やはり業界特有の課題が根強くあったのかなと思いました。現在ではそのVCではパートナーも含め従業員の女性比率が50%を超えておりかなり変わってきているようです。
VCが発展してきた歴史の中で女性のパートナーが少なかった原因として、VCのプロとしてやっていくには家庭を持つことが大きな負担になるということ、当時の大手VCの採用基準のハードルが高く、そもそもそのような経歴の女性がいなかったことなどが考えられています。また、当時のVCには白人男性が多かったので、VCが好んで白人男性を雇用していたという同類性の問題も指摘されています。上記のVCのように女性のパートナーがVC業界として増えていることは多様性を高めるという意味では非常に良いことではないかと思います。
多様性というのはCVCとはあまり関係のなさそうなトピックですが、上記のVCでパートナーの構成において多様性を高めようと努力している事実は重要かなと思います。チームのメンバーの多様性を高めてより高い集合知を得るとともに、さまざまな考え方の中で無意識のバイアスを排除し盲点をできる限りなくそうという取り組みであると推測されます。また、集合知を高めるためには各個人の意見や考えをチーム全員で共有できるような風通しの良い環境が必要であることは言うまでもありません。国内のCVCは親会社の社員を中心に構成されているケースが多いと思いますが、イノベーションを推進するために、組織、チームの構成、意思決定方法等のCVCの制度設計においてこのような視点から考慮すべき点もあるのではないかと思われます。