通常のVCファンドでは、GPとしてのVCへの報酬はマネジメント・フィー(管理報酬)とキャリー(成功報酬)で構成されています。マネジメント・フィーはファンドのコミットメント総額の2%、キャリーはファンドが獲得したリターンの20%というケースが一般的ですが、VCによっていろいろなケースがあるかと思います。キャリーはLP、GPのインセンティブをスタートアップの成功という方向に整合させるのに非常に有効に機能しています。マネジメント・フィーを2%より高くして、GPとして法外な報酬を得るVCがいる一方で、米国のある老舗のVCではマネジメント・フィーを2%よりも低く抑え、キャリーを20%を超える水準に設定しています。これは、ポートフォリオ企業の成功の結果として得られるキャリーを重視することにより、GPとLPのインセンティブをできるだけ一致させるということを目的としています。マネジメント・フィーをできるだけ低く抑えるということは、ファンドのコミットメント総額のうち投資に振り向けれらる金額が多くなるということを意味しており、それによりLP、GP共にポートフォリオ企業が成功した場合に得られるファンドとしての財務リターンを大きくし、そこからより多くの分配を得るという意味で利害が一致しています。コミットメント総額のうち投資に割り当てられる金額を大きくするために、支払われたマネジメント・フィーに相当する金額を補完する形で、 LPへの分配金の一部をリサイクル(再投資)に振り向けるというケースもあります。
CVCの場合、通常のVCファンドにおけるキャリーに相当する成功報酬の設定は難しい課題かと思います。ただ、現実として通常のVCファンドではキャリーがファンドの成功に有効に機能していることを考えると、何らかの形でそのようなインセンティブを用意することが望ましいと考えられます。海外のCVCでも通常のVCと同じレベルの報酬体系を設定するのが非常に難しいため、経験豊富な人材を維持できないことが大きな課題となっています。 CVCチームに社外から採用したVC実務経験者がいる場合は、彼らを社内に留めるためには何らかの成功報酬が必要かと思われます。上記の米国の老舗VCではキャリーはもちろんありますが、インセンティブプランとして通常のVCよりも長いべスティングの期間を設定して対象となるパートナーに長期間留まってもらうような工夫をしているようです。親会社からの出向者については、親会社に準じた報酬体系になっていることが多く、定期的な人事ローテーションを前提に考えるとポートフォリオ企業の成功により獲得される財務リターンを前提にした成功報酬を設定することは難しく、またその成功に対する貢献度を評価することも非常に難しい問題です。成功報酬の設定が難しい場合は、経済的なインセンティブではありませんが、投資の意思決定の権限をある金額までは下に移譲するなどCVCチームにあるレベルでの自律性を持たせることにより、インセンティブの向上につながることが期待されます。
海外VCファンドの報酬体系
