VCにおける追加投資

VCファンドでは追加投資のための資金をリザーブしておくことが一般的に行われています。どの程度のリザーブを確保しておくかはVCファンドの方針にもよりますが、ファンドの20%~60%の範囲で設定されることが多いかと思います。リザーブが少なすぎると順調に成長している投資先への追加投資のための資金が十分に確保できないケースが出てきたり、逆にリザーブが多すぎると初回投資の金額が小さくなってしまいガバナンスに必要な優先権が確保できないケースが出てくることも考えられます。いずれにしても、通常のVCファンドでは投資先への継続的な資金支援を前提に投資活動を行っています。これは、スタートアップ側の継続支援をしてくれる投資家に投資をしてもらいたいという利害と一致しています。スタートアップとしては、追加投資をしてくれない投資家に投資をしてもらうというリスクはできるだけ回避したいと考えています。米国では、2000年のITバブル崩壊後に資金調達環境が悪化しダウンラウンドが多くなったときに、リードインベスターが投資家のシンジケートを維持するためにPay-to-Play条項を投資条件に入れるケースが増えました。これは後続の資金調達ラウンド(ダウンラウンドに限定される場合もある)において追加投資を行わないと、その投資家の保有する優先株式が自動的に普通株式に強制転換されるというものです。このように、スタートアップ及びリードインベスターはできるだけ継続支援可能な投資家をシンジケートに入れたいと考えています。
VCが追加投資をしない場合に想定されるリスクとしては下記のようなものが考えられます。
(1) 潜在的な投資家に対するネガティブなサインとなる
(2) 継続的な支援を行わない投資家と見られる
(3) 業界での評判が下がり良い案件にアクセスできなくなる
(4) 投資先と良好な関係を継続することが難しくなる
(5) 各種優先権の確保が難しくなり、必要な情報が入手できなくなる
(6) 持株比率が希釈化することにより財務リターンが低下する

(1)については、あるスタートアップに投資をしている既存のVCが後続の資金調達ラウンドで追加投資をしなかった場合に、そのスタートアップへの投資を検討している新規投資家に対して悪いシグナルになるということを意味しています。これは、不確実性の高いアーリーステージの場合に影響が大きいと考えられますが、事業がある程度進捗しており資金調達におけるバリュエーションも高くなっている場合には影響はそれほど大きくないケースもあると思われます。
国内のCVCは追加投資はあまり行わないと言われていますが、海外では通常のVCと同じような投資活動を行っているCVCも多く、そういうCVCでは追加投資のためのリザーブを確保しているところも多いようです。CVCと言えどもVCとして投資活動している以上、業界関係者と利害を一致させ長期的な視点でVC投資を推進していくことが重要であり、投資先への追加投資を行わない場合は上記のようなリスクも想定されることに注意を払う必要があります。もちろん、追加投資を行わないということは状況によっては潜在的な損失へのエクスポージャーを制限したり、新規の投資機会にリソースを配分することでポートフォリオの多様化を図ることができるなどのメリットも考えられますが、長期的なCVCの戦略の中で追加投資の方針を明確に設定しておくことが重要であると考えられます。