VCによるシンジケート投資

VC投資の特徴の1つとしてシンジケート投資があげられます。これは複数のVCがシンジケートを組んでスタートアップに共同で投資をするという形態です。投資ステージあるいはファンド規模によっては、シンジケートではなく1社で必要資金の全額を投資するというケースもありますが、一般的には今でも複数のVCによるシンジケート投資は広く行われています。
VC投資におけるシンジケートには通常リードインベスターが存在し、その資金調達ラウンドに参加するVCの中の1社がその役割を担うことになりますが、複数のVCが共同でそのラウンドを主導するケースもあります。リードインベスターはそのラウンドにおいてもっとも大きな金額を投資し投資条件を交渉することが多く、それ以外の投資家(フォロワー)はその投資条件を前提に投資検討することになります。海外では通常リードインベスターであるVCの担当パートナーが投資後にはその投資先の取締役となり、ハンズオンでガバナンスを効かせることになります。国内でもそのようなケースが多くなっています。
多くのVCがシンジケート投資を行うのには、主に下記のような目的があると考えられます。
(1) 投資に伴うリスク(特に資金リスク)を分散する
(2) 大規模な資金需要に対応する
(3) 投資先への資金以外の支援を多様化する
(4) 共同投資の機会を共有する

(1)については、特にアーリーステージのスタートアップは不確実性が高いため、複数のVCで共同投資することにより各VCはリスクを限定しつつ、将来の利益の分配を受けることができます。スタートアップの資金調達は段階的に行われるケースが多く、通常のVCファンドでは追加投資のための資金をリザーブしていますので、追加の資金源を確保することで将来の資金調達リスクを低減することができます。
(2)については、多くの魅力的なスタートアップには投資家が殺到し、調達額も1つのVCで資金提供できる金額を上回っているケースがあります。そのような場合に複数のVCで共同投資を行うことにより、調達規模の大きい質の高いラウンドに参加することができます。
(3)については、VCはそれぞれ業界の専門知識、投資対象地域、ビジネス開発のコネクション、エグジットルートなど異なる強みを持っており、共同投資をすることによりそれらを持ち寄ることができます。スタートアップとしても、特定のVCへの過度な依存を避けながら、より広範な支援ネットワークを構築することになります。
(4)については、共同投資の経験が各VC間の信頼関係の構築につながり、将来の案件情報の共有につながります。お互いの共同投資の機会を共有することにより、ファンドの資金を1社に過度に集中させることなく、ポートフォリオを分散することができます。

CVCの投資において、VCがシンジケートを組成する上記の目的はいずれも重要で、これらの目的を常に意識しておくことが、投資のリスクを低減するとともに投資先の成功確率を上げることに寄与すると考えられます。事業会社あるいはCVCが主導して投資を進めてきたスタートアップで、上記のようなリードインベスターの役割を担っている投資家がおらず、投資条件およびガバナンスの点から課題のあるケースも見られます。投資条件においてはバリュエーションが高くなってしまい通常のVCが検討しにくいケースがあったり、ガバナンスにおいては投資家から取締役を派遣していない、あるいは特定の投資家による事前承認事項(種類株式では拒否権)の規定がないなどのケースもあります。CVCでリードインベスターにはならないというケースで考えると、上記のようなVCが主導するシンジケートにフォロワーとして参加するという投資機会をできるだけ多くするのが良いと考えられます。さらにそのシンジケートの中で上記の(3)を意識し、親会社の協力のもと投資先にどのような付加価値を提供できるのかということを常に考え実行することが、そのシンジケートの中での存在価値を高め他の投資家との良好な関係を構築し、(4)の次の新しい投資機会を得る可能性につながっていく考えられます。