VCにおける経路依存性

存続期間10年のGP-LP型のVCファンドは、VC投資を行うための仕組みとして長年使われてきています。このようなクローズドエンド型のファンドは、これまではLP、GP双方にメリットがあったと思われますが、最近では未上場の期間を長くするスタートアップも増えており、デメリットも顕在化してきています。数年前に米国の著名なVCがオープンエンド型のファンドに移行した際に、VC業界が存続期間10年のクローズドエンド型のファンドの仕組みを使い続けており、まったく時代に対応できていないと指摘しています。これは今までうまく運用されていた仕組みが、時代の変化、環境の変化によってうまく機能しなくなったにもかかわらず、一部だけ修正しようとしても全体に影響してしまい修正することができず、そのままの状態が継続するという経路依存性の問題の1つと言えるかもしれません。VCそのものではありませんが、米国においてスタートアップが集積する代表的なエリアとして、東海岸のルート128(ボストンエリア)と西海岸のシリコンバレーがありますが、現在ではシリコンバレーがルート128を凌駕しています。ルート128では防衛関連企業や大企業との強固な結びつきを特徴とする閉鎖的で階層的なエコシステムで、新しい技術トレンド等への対応が遅れてしまいました。一方で、シリコンバレーは大学とスタートアップ等の産学連携が強力に推進され、多様な人材が交流する場や機会が創出され、オープンなエコシステムが構築されてきました。経路依存性の課題を解決するためには多様性が重要な要素の1つになると考えられます。

CVCの親会社は大企業のケースが多いかと思いますが、上記のような経路依存性に起因する課題も存在するかと思います。例えば、CVCを開始するにあたり多様な人材が必要という問題意識があったとしても、そのような多様な人材を受け入れるための多様な働き方や評価制度が実現できていないというようなケースが考えられます。CVCをファンドで行う場合に上記の存続期間10年のGP-LP型のファンドで行うケースは多いかと思いますが、それが親会社が描く中長期戦略を実現するために適した仕組みかどうかという点については検証が必要かと思われます。別の視点として、CVCの親会社の経営トップの任期は2~4年と短いケースが多く、そもそもCVCの制度設計において中長期的な視点から必要な議論ができていないこともあり、その場合は戦略リターンは短期的なものに焦点があたり、財務リターンについてはほとんど見ていないというケースも考えられます。また、経営トップの交代により大きな方針が変更となり、CVCもそれに合わせて柔軟に対応するということも必要になってくることも考えられます。いずれにしても、親会社の実現したいことをその方法論の1つであるCVCを使ってどのように実現していけるのかということについて、中長期的な視点で検討していくことが重要であると考えられます。