海外では戦略リターンと財務リターンの両方を重視するCVCが多くなっています。財務リターンを実現するためには長期的な資本のコミットメントが必要となるためファンド構造にしているところが多く、経験のあるVC人材で構成される専門の投資チームにより運営されています。よりインセンティブを高めるため、通常のVCと同じようなキャリー(成功報酬)を提供しているCVCもあります。実際の投資においては通常のVCがリードしている案件に投資をすることが多いですが、共同あるいは単独で案件をリードするケースもあります。意思決定においては戦略リターン実現のための明確な戦略的ストーリーが必要とされ、財務リターンについては通常のVCと同じレベルのリターンを要求しているところが多くなっています。戦略的ストーリーをどこまで求めるかはCVCによって差がありますが、親会社との協業や提携まで求めていないケースが多いようです。財務リターンを重視しているCVCでは、親会社との戦略的整合性はプラス要素ですが、すべての投資に必須ではなく、主に財務リターン目的で投資を行うこともあります。また、戦略リターンと財務リターンはトレードオフの関係とはみなさず、財務リターン実現の可能性を投資検討の前提として、それを示せない場合は持続可能な戦略的パートナーとなる可能性が低いと考えるCVCもあります。この場合、CVCからの投資が実行されなくても親会社との協業は検討を継続するというケースもあるようです。投資ステージとの関連では、アーリーステージの投資は市場の知見や洞察を獲得することが主目的で、レイトステージの投資は財務リターンの実現を主目的とするCVCが多いようです。いわゆるダンベル型ポートフォリオを指向しているものと思われます。
CVCにおいて財務リターンを考える場合には、長期的な視点が欠かせません。財務リターンのみを目的としているVCファンドは通常10年の存続期間で運用されていることを考えると、CVCの場合もそのような長期的な視点で財務リターンを考える必要があります。財務リターンを考えるということはCVCそのものの事業としての財務的な健全性を考えることになり、財務的に健全であることはCVC継続の前提条件となります。また、本体投資であればファンドのような期限の制約がないので投資先がIPOした後も継続保有し、IPO後の成長も投資収益に取り込むことも考えられます。戦略リターンについても長期的な視点で考える必要があり、それに応じてCVCの役割、投資対象やポートフォリオの組み換えなどを検討する必要があります。高い財務リターンが期待できる一方で親会社との戦略的整合性が未知数の案件への投資判断はCVCによって違いがありますが、財務リターン重視の観点からこのような案件を取り込めるとポートフォリオ構築に柔軟性が出てきます。協業のような親会社の現在の事業とのシナジーは短期的な戦略リターンと考えられますが、親会社にとって中長期的に重要と考えられる分野に投資対象を拡大することで、CVCとしての投資機会が増えることになり財務リターン実現に寄与することになります。親会社にとっての重要分野と通常のVCが成長市場して捉えている分野が同じであれば、戦略的価値と財務的価値が重なることになり申し分のないターゲットとなりますが、そうではない分野の場合は戦略リターンと財務リターンのバランスをどう考えるのか決めておく必要があります。
戦略/財務リターンのバランス
