VCファンドへのLP出資

CVCを始めるにあたってファンドか本体投資かは別にして直接投資から始めるケースも多いかと思います。直接投資から始めるとするとVC投資の実務のノウハウをどう補完するか、またそもそも質の良いディールフローにどうアクセスするかという課題に当初から直面することになります。これを解決するためにVC投資の実務経験者を採用したり外部VCをGPとしてファンドを組成したりするケースもあるかと思います。
直接投資ではない別のCVCの始め方としてVCファンドへのLP出資も考えられます。海外の有力なCVCでも最初はVCファンドへのLP出資から始めているところも多く、現在でも直接投資と併用しているケースもあります。また、米国のあるCVCでは、CVCの投資をVCファンドへのLP出資に一本化して財務リターンを実現するとともに、LP出資しているファンドのポートフォリオ企業を分析して、自社ビジネスとシナジーのある企業のいくつかを買収することにより戦略リターンを実現しているところもあります。VCファンドへのLP出資のメリットとしてはリスクを限定しつつGPであるVCの経験値を活かす形で(間接的にスタートアップに)投資することが可能になる点です。ただし、当然ですがどのスタートアップに投資するかという意思決定はGPであるVCが行うことになります。まず、VCファンドへLP出資することにより、GPから提供されるポートフォリオ企業に関する情報、あるいは業界情報等を自社の事業戦略策定にどう活かしていけるのかを検討することができるとともに、VC投資の一連のプロセスについての知見を得ることができます。
VCファンドへのLP出資の別のメリットとしては、投資対象となるエリアあるいは分野を選択できるという点です。自社がターゲットとしているエリアあるいは分野を投資対象としているVCファンドにLP出資することによりそのエリアあるいは分野の情報、知見等を蓄積でき、ある程度経験値が高まり体制を構築できれば直接投資に切り替えていき、新しいエリアあるいは分野を別のVCファンドへのLP出資でカバーしていくということも考えられます。
VCファンドへLP出資する場合、組合契約(Limited Partnership Agreement)上では提供される情報は限定的であるため、必要な追加情報や共同投資機会の提供等については個別にサイドレターを締結して合意しておくことは必要であると思われます。
通常のVCファンドでは存続期間が10年で、最初の5年を投資期間として新規案件の組み入れを行う期間と設定しているケースが多いと思います。通常は組み入れがある程度完了すると次のファンド組成のプロセスが開始されます。これはVCファンドにLP出資した場合は新規案件に関する情報を収集できるのは最初の5年間だけであることを意味しています。CVCの活動そのものが長期的なコミットメントを必要としますが、VCファンドへLP出資する場合も、そのVCがGPとして組成する後続のファンドへのLP出資も視野に入れた長期的な視点でVCと付き合っていくことも必要であると思われます。