CVCのリターンの考え方については、国内では主に戦略リターンを重視しているCVCが多く戦略リターンと財務リターンの両方を重視しているところは少ない一方で、海外では戦略リターンと財務リターンの両方を重視しているCVCが多く主に戦略リターンを重視しているところは少ないようです。戦略リターンと財務リターンの両方を重視しているCVCに着目すると、海外の方が国内に比べてある一定以上の財務リターンを実現しているCVCの割合が多くなっているようです。これらの評価の前提として、CVCを本体投資、ファンド投資のどちらで行っているかにもよりますが、何を財務リターンとするかについて明確な定義が必要となります。
国内のCVCが財務リターンをさらに拡大するためには下記の3つの取り組みが考えられます。
(1) 戦略リターンを広義に定義することにより投資機会を拡大する
(2) 投資検討時のバリュエーション(企業価値)を評価する
(3) 親会社のリソースを使って投資先の成長を支援する
(1)については、国内のCVCは親会社の現在の事業との何らかのシナジーを戦略リターンとして定義しているケースが多いかと思いますが、その場合は投資対象となる分野が親会社の現在の事業に近い分野に限定されてしまい、将来的に有望な分野や技術を見落としてしまう可能性があります。CVCの投資分野を親会社の現在の事業およびその周辺分野に限定することなく新しい分野にも広げることによって、投資機会を増やし財務リターンを実現する機会を拡大することができます。そのためには戦略リターンの定義を拡大解釈し親会社の現在の事業とのシナジーだけではない領域に広げることが必要となります。海外のCVCでは戦略リターンとして自社の戦略策定のためのイノベーションに関する「情報収集」やM&Aのパイプライン作りとしているケースも多く、投資先からの情報や関係性が社内でどのように活用できるのかという全社的な視点から、戦略リターンを再定義することも考えられます。
(2)については、そのスタートアップへの投資が財務リターンを実現できる可能性があるかどうかということに関連します。VC投資の財務リターンは投資検討時のバリュエーションとエグジット時のバリュエーションの相対的な評価から算定されます。その前提としてそのスタートアップの事業計画を詳細に検討する必要があり、その事業計画がある前提のもとに実現可能性が高いと判断できる場合は、それに基づいてエグジット時のバリュエーションを算定してリスクに見合う財務リターンが実現できる可能性があるかどうか検証します。投資検討時のバリュエーションはそういう視点で評価する必要があります。
(3)については、親会社の現在の事業との協業などのシナジーを通じて親会社の事業への貢献を重視しているケースが多いと思いますが、CVCもVCである以上、通常のVCと同じように投資先へ何らかの付加価値を提供することによって投資先の成長を支援する必要があります。通常のVCではできない付加価値提供として、親会社のリソースを使ってCVCの投資先の成長を支援できれば、それが財務リターンを高めることにつながっていきます。そういう意味では戦略リターンの実現が財務リターンを補強していると考えることもできます。海外のあるCVCでは親会社と投資先の双方がその関係から十分なものを得ているかどうかを重要視しており、それを “Gives and Gets” と呼んで常にその進捗状況を点検しているようです。投資先のスタートアップとは対等なパートナーとして戦略的価値を交換できる関係を構築していくことが重要です。一般論として、他社とのコラボレーションにおいて “Giver” つまり「与える人」は成功を収めやすいという研究もあるようです。VCの世界でもそういう与える姿勢を持ち投資先の成長を支援することによって、受け取る機会を得られる可能性も高くなると考えられます。
国内CVCの財務リターンの拡大

