日本のVC市場はここ数年一貫して成長を続けており、いくつかの追い風を受けています。日本のベンチャー・エコシステムでは、通常のVC以外の投資家が重要な役割を果たしており、政府系投資ビークルが民間市場に大量の資本を投入しているのに加え、銀行や保険会社を含む事業会社もVC市場に積極的に参加しています。
このように国内のVC市場はCVCや銀行が大きな役割を果たしている一方で、CVCの投資活動について下記の3つの課題があると考えられます。
(1) CVCが参加する案件はバリュエーションが大きくなる傾向がある
(2) CVCは一般的に追加投資をしない傾向がある
(3) CVCが積極的に投資を行っているにもかかわらず、スタートアップの買収が十分に行われていない
(1)に関して、国内のCVCが高いバリュエーションでも投資するケースが多いことはよく指摘されることですが、これは財務リターンよりも戦略リターンを重視している方針によるものかと考えられます。財務リターンは投資時のバリュエーションとエグジットのときの想定されるバリュエーションの相対的な評価から算定されますが、これがきちんと算定されていないと投資時のバリュエーションの評価がなされないということになってしまいます。 財務リターンの評価は財務リターンそのものを算定するということに加えて、そのスタートアップの成長性を評価するという意味でも重要かと思います。
(2)に関して、追加投資をしない国内のCVCは多いのではないかと思いますが、戦略リターンとの関連で追加投資するかどうかの判断をされているCVCもあるかと思います。追加投資をしない場合は当然保有する株式の持分が希釈化しますので将来期待される財務リターンを低下させることになります。また、 オブザーバー指名権(Observation Right)や情報開示請求権(Information Right)を保有しており、その権利の付与に保有株式の数量に関する条件がある場合は、権利確保のためにそれらとの関連を考慮する必要があります。また、追加投資をしないと保有している優先株式が普通株式に強制的に転換されるPay-to-Play 条項が投資条件に入っている場合は、追加投資についての方針も踏まえスタートアップとの交渉が必要な状況も出てくるかもしれません。
(3)については、CVCの戦略リターンの1つの形としてM&Aがあまり意識されていないケースも国内のCVCでは多いのではないかと思います。米国のCVCではCVCの目的の1つとしてM&Aのパイプライン作りとしているケースも多い印象です。日本でも大手企業によるスタートアップの買収やその後のスイングバイIPOのような事例も出てきていますので、今後さらにこういう事例が増えることを期待したいと思います。
国内のVC市場の動向とCVCの課題
