大手VCがLPとして新興VCのファンドに出資をするケースがあります。これは財務リターンを目的とした判断というよりも、自社の投資戦略から慎重に選択したニッチ市場において自社のメインファンドを運用するGPが機関投資家LPのように振る舞うと捉えることができます。典型的なケースとしては、大手VCに所属していた実績のあるパートナーが独立して自分のファンドを立ち上げる場合です。これは一種のスピンアウトファンドと考えることができます。別のケースとしてはスタートアップの創業者あるいは経営幹部が新興VCを立ち上げ、そのファンドに大手VCがLP出資をする場合があります。このような新興VCでは極めて特化した戦略(特定セクター、特定地域など)や差別化ポイントを持ち、独自のディールフローを持つケースが多くなります。大手VCとしては、規模の大きい自社のメインファンドでは運用上近づきにくい新興エコシステムに早期にアクセスする手段の1つと考えられ、新興VCからの定期的なレポートも含めて戦略的知見が獲得でき自社の投資戦略の策定などに活用できます。また、ディールフローという観点からは、新興VCの最優良案件への早期アクセス権を獲得でき、新興VCがシードステージで投資をして、大手VCがシリーズA以降で投資をするというような投資ステージにおけるすみ分けが機能する場合は特に有効であると考えられます。大手VCとしては規模の大きいメインファンドの一部を規模の小さい新興VCのファンドにLP出資することにより、資本を効率的に配分しつつ、新興VCのファンドが投資する優良案件への一種のコールオプションを獲得することにつながります。また、LP出資している新興VCが将来ブランド化した場合は、早期のLPポジションは非常に収益性が高くなる可能性もあります。
上記のような大手VCによる新興VCのファンドへのLP出資の目的は、CVCの目的とかなり重なる部分があります。VC投資を熟知しているGPである大手VCが他のVCファンドにLP出資するケースがあることを考えると、投資分野や投資地域によっては案件のソーシングや必要な専門知識を補完するために、VCファンドへのLP出資はCVCの取り組みとしても有効な手段の1つになると考えられます。CVCとして投資活動を行うためには、ある程度のディールフローを確保することが必要であり、VCファンドへのLP出資はそのためにも有効です。ファンド規模の小さい新興VCへのあるレベル以上のLP出資をした場合には、GPである新興VCとの関係が密となりさまざまな情報、共同投資機会、投資ノウハウなどの獲得につながる可能性があります。VCファンドへのLP出資を検討する場合には、新興VCかどうかにかかわらず過去の実績だけではなく全体の投資戦略や各投資プロセス(ソーシング、スクリーニング、DD、投資条件交渉、モニタリング、エグジットなど)における差別化ポイントを確認する必要があります。また、GPであるVCと良好な関係を継続するためには、そのVCが今後組成する後続のファンドへのLP出資も視野に入れて検討することも重要であると思われます。
大手VCによる新興VCへのLP出資
