最近、オルタナティブ投資運用会社などがVC投資を対象としたオープンエンド型のエバーグリーン・ファンドを組成しています。エバーグリーン・ファンドとは従来のVCファンドのような存続期間のあるクローズドエンド・ファンドとは異なり、ファンドの期限を限定せずに、利益を再投資するなどして、投資を継続していくファンドの仕組みです。米国では通常のVCでも従来の存続期間10年のファンドからエバーグリーン・ファンドに移行しているところもあります。エバーグリーン・ファンドは、LPにとっては柔軟な流動性、長期的投資期間、長期的リターンの実現などの潜在的なメリットが考えられる一方で、明確なエグジット戦略の欠如、流動性リスク、ガバナンスの欠如などのリスクも考えられます。ある投資運用会社のVC投資を対象としたエバーグリーン・ファンドでは、アーリーステージのベンチャー投資とレイトステージのグロース投資を投資対象として、損失を限定しつつ非対称的なリターンプロファイルを生み出すように設計されているようです。ダンベル型のポートフォリオと言えるかもしれません。ベンチャー投資については通常のVCとの共同投資、グロース投資ではセカンダリー取引を主なディールソースとしているようです。VC投資にとって流動性の改善が遅れている中で、セカンダリーは今後も増加すると予想されます。ある投資運用会社では、スタートアップへの直接投資に加えてVCファンドへのFoFも併用しています。FoFのアロケーションとしては、大手VCのファンドは意図的に30%程度に抑え、残りをニッチ、小規模、新興のVCファンドに割り当てるようです。これは、最高のリターンは大手VCファンドの外にあり、特定の分野に強みを持つファンドが高いパフォーマンスを実現する可能性が高いという考え方に基づいているようです。
CVCの視点から見たときに、投資運用会社による上記のようなエバーグリーン・ファンドの取り組みは下記の3つの点で参考になるのではないかと思います。
(1) 投資対象をベンチャー投資とグロース投資としている
(2) 利益を再投資することで長期的なリターンを実現する
(3) 直接投資に加えFoFも併用している
(1)については、ベンチャー投資をアーリーステージ、グロース投資をレイトステージの投資を想定すると、CVCの投資を小口分散投資と重点投資の2つに分けて実施すると考えることができます。戦略リターンについてはいろいろな考え方がありますが、海外のCVCの取り組みなどを参考にすると、小口分散投資の目的は情報収集やM&Aのパイプライン作り、重点投資の目的は協業実現などの投資先との関係強化と考えることができます。これは戦略リターンに応じて投資の方法を多様化するものであり、その方法の1つとしてダンベル型のポートフォリオは、財務リターン実現にとっても有効なものであると考えられます。
(2)については、CVC投資をファンドで行っている場合は、再投資(リサイクル)は限定された範囲内でしか行うことができませんが、本体投資の場合はエバーグリーン・ファンドと同じように考えることができます。CVC活動の財務状況の健全性を維持するとともに将来の投資原資を確保できるようにするために、投資先のIPO後の株式を継続保有しIPO後の成長も投資収益に取り込んでいくことが可能となります。投資先の上場株式については、戦略リターンの実現状況とその投資先の今後の成長余力を主なポイントとして売却の優先順位を決めておくことで、新規資産の組み入れおよび保有資産の組み換えを行っていくことができます。
(3)については、特にニッチ、小規模、新興のVCファンドへのアロケーションを大きくしている点が注目されます。特定の分野に強みをもつVCと関係を構築することで、より優れた戦略的洞察とディールソースを獲得することが目的と考えられます。CVCにとっても強力なVCネットワークは大きな競争優位性になるだけでなく、補完的なディールソースとして活用することができます。また、ファンドへのコミットメントの金額にもよりますが、親会社の戦略をGPの投資方針に反映するなど積極的な協力関係を構築することができる可能性もあります。
VC投資のエバーグリーン・ファンド

