VCとして投資を行う上で重要な投資条件の1つにバリュエーションがあります。バリュエーションはスタートアップから非公式に提示されることもありますが、最終的にはリードインベスターであるVCが提示するタームシートに記載することにより決まります。バリュエーションの算定方法はいろいろありますが、基本的にはスタートアップとリードインベスターの交渉により決定します。スタートアップは往々にして高いバリュエーションを好みますが、リードインベスターも含めた新規投資家はより多くの持分を得るために低いバリュエーションを要求します。リードインベスターとしてはバリュエーションの金額を交渉する場合もありますが、バリュエーションは妥協する代わりに他の条件を交渉するケースもあります。例えば、残余財産の優先分配権(Liquidation Preference)において通常は優先分配が投資金額と同額(1倍)であるところを2倍にする、通常は普通株主への分配への参加権がないけれども(米国では参加権がないケースが多い)、参加権ありにするというようなケースもあります。あるいは、希薄化防止条項(Antidilution)において、通常は加重平均方式にするところをフルラチェット方式にするというようなケースもあります。このような他の条件でスタートアップが譲歩するケースでは、スタートアップはバリュエーションは好条件になっていても、将来的なリターンの分配などで不利益を被る可能性が高くなります。投資条件を評価する場合には、バリュエーションはあくまで投資条件の1つであり、他の条件と合わせて検討することが必要です。バリュエーションの妥当性の検証にもいろいろな方法がありますが、よく行われているのはエグジット価値から逆算するというものです。スタートアップの事業計画などから想定されるエグジット時の企業価値から目標としているリターンを実現するためには現在のバリュエーションがどのくらいが妥当かという見積もりを行います。すなわち、投資時点に取ることになるリスクに見合うマルチプルになるかどうかを検証します。VCはいろいろな案件を見ていますので、同じ業種で同じステージの類似のスタートアップの投資条件を参考にすることもあります。業界的にホットな分野ではバリュエーションが高騰することがありますが、その場合は高いバリュエーションに何が反映されているのかを確認して、いわゆるコンセンサス・ラウンドになっていないかなどを慎重に検討する必要があります。
CVCにとってもバリュエーションは重要な投資条件の1つとして、上記ような視点も含めて検討する必要がありますが、戦略リターンをどう考えるかというCVC特有の課題もあります。CVCがリードインベスターとならないケースでは、財務リターン実現のために提示されているバリュエーションが妥当かどうかを何らかの方法で確認することになります。CVCがリードインベスターになる場合には、スタートアップとバリュエーションを交渉する当事者になりますので、妥当と思われるバリュエーションの範囲を想定しておく必要があります。その場合、期待している戦略リターンの経済価値をバリュエーションに加算されるプレミアムと考えると、通常のVCが妥当と考える範囲を超えるバリュエーションも視野に入っている可能性もあります。その場合でも、スタートアップの要求に応じて過度に高いバリュエーションにはならないように注意する必要があります。CVCがリードインベスターになり将来のM&Aも視野に入れている場合は、M&Aの優先交渉権などの権利確保を交渉することになります。そのような権利確保をした場合は、スタートアップの将来の選択肢に対する制約と考えられ、バリュエーションにもそれが織り込まれる可能性がありますので注意が必要です。
VC投資におけるバリュエーション
