CVCファンドにおける外部LP

CVCをファンドで行っている場合、通常は親会社が単一のLPである二人組合で運用されることが多くなりますが、親会社以外の外部LPを招き入れてマルチLP型CVCファンドとしているケースがあります。この場合の親会社にとっては主に下記のようなメリットが考えられます。
(1) ファンド規模の拡大
(2) リスクの分散と共有
(3) ガバナンス強化と制度化
(4) 人材の確保

(1)については、外部LPが参加すると当然ファンド規模は親会社のみの場合よりも大きくなりますので、投資戦略の自由度(投資件数・投資金額の増加、追加投資の余力など)が大きくなります。
(2)については、親会社がファンド運営の財務リスクを100%負うのではなく、外部LPにも分散させることができます。親会社が新しい領域を開拓するためにCVCを活用する場合に、不確実性が高いスタートアップへ多額の内部資本を投下することに慎重である場合には有効です。
(3)については、外部LPとはLPA(Limited Partnetship Agreement)を締結することになり、その前提となる投資委員会、報告体制、財務リターン重視の方針など通常のVC的なガバナンスを整備する必要があります。
(4)については、外部LPは財務リターンの実現を期待しているケースが多いので、それを実現するために実績のあるVC人材を採用する必要があります。そのためには通常のVCで提供されているキャリー(成功報酬)やそれに近い成果連動型報酬を提供することが重要となります。

欧州のあるCVCでは、直近のファンドの外部LPからのコミットメント総額が全体の75%を占めているようです。親会社の目的としては、上記のようなメリットに加え、CVCとして培ってきたディールフロー、案件選定能力、業界知見などのCVCとしての競争優位性を収益化できると考えています。すなわち、このCVCは外部LPの参加によりファンド規模を大きくすることにより、管理報酬やキャリー(成功報酬)を得ることができ、ビジネスモデルを通常のVCの経済モデルにより近づけることができます。外部LPの比率が高いものの、このCVCの投資戦略は親会社にとってのコア領域に焦点を当て続けています。親会社はこのCVCファンドの投資方針に自社の戦略に沿ったセクターやテーマを優先することができ、外部LPもそれを理解した上で参加しているので当初のファンドの文書に明記されています。また、親会社は投資委員会においても重要な役割を確保しており、各投資案件の意思決定において純粋な財務リターンに加えて戦略リターンが考慮されることが保証されます。親会社にとってファンドの投資先の中で戦略的に重要で、より大きな持ち分や深い関与を望む場合には、自己資本から共同投資するケースもあります。外部LPへは財務パフォーマンス指標の報告が義務付けられるため、親会社で管理される戦略的KPIと並行して財務指標が設定されることになります。これは戦略リターンと財務リターンの両方を重視するハイブリッド型CVCをより強化したモデルと考えることができます。

CVCファンドに外部LPを招き入れる目的の中で、ガバナンス強化を前提として財務指標が親会社が設定する戦略的指標と明確に分離されることは重要です。外部LPが存在していなくても財務指標をCVCとして設定することは、CVCの財務的に健全な運営に寄与することになります。これは財務リターンを実現するためだけではなく、起業家やVCとインセンティブを整合させ、そのコミュニティから良い投資家と評価されるためにも必要です。CVCファンドに外部LPを招き入れることは、そのシグナルをさらに強化することにつながります。財務リターンを実現する必要があるという「制約」の中で、いかに自社の定義する戦略リターンを実現できるようにCVCを設計するかという問題ととらえてもいいかもしれません。CVCを設計するというだけではなく、それを全社的な取り組みとして推進する社内の動機付けも必要となります。