VCによるスタートアップのCEO評価

米国のある著名な投資家は、人材を採用する際には、誠実さ、知性、そしてエネルギーの3つを資質を見極める必要がありますが、もし最初の資質(誠実さ)が欠けていれば、残りの2つ(知性、エネルギー)があなたを破滅させてしまうだろうと警鐘を鳴らしています。これは、VCによるスタートアップのCEO評価においても重要なポイントですが、この資質を見極める簡単な方法はありません。VCは通常、CEO本人との面談に加え、元同僚、従業員、顧客、パートナー、投資家などに対してリファレンスチェックを行います。CEOを評価するのにはいろいろな視点がありますが、他社よりも先に未来を見通す「ビジョン」、計画を一貫して結果へと結びつける「実行力」、世界トップクラスの人材を引き寄せる「人材採用力」、急速に学び進化する「適応力」などの特性を兼ね備えた人物かどうかを判断していくことになります。これらはいずれも重要ですが、会社の製品や市場を変更する可能性があることを考えると、CEOは適応力を持ってVCや利害関係者の指導やアドバイスを受け入れて戦略を練り直す姿勢も必要です。米国のある著名なVCでは、下記のような視点からCEOを評価しています。
(1) 実行すべきことを分かっているか?
(2) 実行すべきと分かっていることを会社に実行させることができるか?
(3) 適切に設定された目標に対して期待された結果を達成できたか?

(1)については、戦略と意思決定の視点から見ています。CEOは戦略を明確で説得力のあるものにするため、実行すべき戦略を「この会社のおかけで、この世界はどのようにより良い場所になるのか?」というストーリーにする必要があります。CEOの評価においては、そのストーリーが一貫性を保ち、曖昧になるのではなくより鮮明になっていくかどうかを確認することになります。特にステージの早いスタートアップでは、十分な情報が揃う前に重要な意思決定を行う必要がありますので、CEOは日々の活動の中で意思決定に重要な影響を与える可能性のある情報を常に収集することが重要です。CEOの評価においては、CEOが不確実性、限られた情報、トレードオフとなる重要事項に直面したときに、どのような判断のパターンが現れるかということを確認する必要があります。
(2)については、適切なチーム構築と会社の効率的な運営という視点で見ています。戦略を実行するためには、それを実行するために適切なチームを構築して、その質を維持していくことが重要です。そのためにCEOには世界トップクラスの人材を引き寄せ採用できる能力が必要となります。戦略を実行し成果を上げるためには、構築したチームを構成する各メンバーが自分の役割に専念できる環境を作り、権限を委譲し、適切なインセンティブを与えることが重要となります。
(3)については、成果を正しく測定するためには、目標を正しく設定することが重要です。目標は高すぎず低すぎず、会社にとっての機会の規模や性質を考慮して設定する必要があります。

CVCのCEO評価においても、上記のような視点はすべて重要です。CVCでは戦略リターンの実現という目的がありますので、別の視点も必要となります。戦略リターンとして親会社の現在の事業とのシナジー追及を想定した場合、スタートアップが親会社と連携することになりますが、大企業に特有の時間のかかる意思決定、数多くの利害関係者などを考慮して進めることになります。そのため、CEOの評価においては、過去に大企業への販売、提携、あるいは統合などを成功させた経験があるかどうか確認することになります。スタートアップの技術あるいは事業が親会社の事業と密接に関連している場合には、将来のM&Aも視野に入る可能性があります。その場合には、CEOにその可能性に対する考え方やその他のエグジットの方針があるかどうかを確認することになります。これらの点も含めて、CEO評価においては、長期にわたり親会社にとって信頼でき、価値を創出する戦略的パートナーとなり得るかどうかを見極めることになります。