持続的に成長するスタートアップ

最近のスタートアップは、急成長していても未上場の状態を長期間継続することも多くなっています。また、VCでも存続期間のある通常のファンドからオープンエンド型のエバーグリーンファンドに移行するところも出てきています。VCは投資先の株式を長期間保有する必要が出てきており、IPO後も継続保有することも考えると、IPO前だけではなくIPO後も持続的に成長するスタートアップに投資をする必要があります。米国のあるVCでは、永続する企業の要素として、目的の明確さ、大きな市場、富裕層顧客、集中、苦痛(ペインポイント)の緩和、異なる視点で考える、チームのDNA、機敏さ、倹約などを挙げています。これにはいろいろな考え方がありそうですが、市場、製品、経済性、組織、資本、ガバナンスの視点から主に下記のように考えることもできるかもしれません。
(1) 規模が大きく、拡大し続ける市場を対象としている
(2) 強力なプロダクト・マーケット・フィットを実現している
(3) 魅力的でスケールするユニットエコノミクスを持っている
(4) 進化し続けるリーダーシップと企業文化を持っている
(5) 成長を維持するために最適な資本配分の能力を持っている
(6) 長期的な意思決定をささえるガバナンスを構築している

(1)については、市場に明確な拡大のベクトルがあり、その市場で単に問題を解決したというだけではなく、「追い風」という長期的なトレンドに乗っており、その恩恵を受けることが重要です。市場自体が拡大し続けていると、IPO後に企業が巨大化した後も成長を継続できます。持続的に成長する企業は単に大きな市場に参入したというだけでなく、その市場を拡大させるケースもあります。
(2)については、企業がIPO後も長期間にわたり成長し続けられるのは、単に先行者としての優位性を持っていたというだけでは不十分です。「あれば便利なもの」ではなく、「なくてはならないもの」を常に追求し、高い継続利用率を実現する必要があります。そのような企業は、単に新規ユーザーを獲得するというだけではなく、時間の経過とともに顧客の利用が深まることで恩恵を受けることができます。
(3)については、一部のスタートアップではIPO前の資金調達サイクルにおいて並外れた成長を見せることがありますが、IPO後もその成長を継続できる企業はそれほど多くありません。高い成長率とともに、収益性や持続期間にも注意を払う必要があります。どれほど高い成長率を実現していても、それが利益につながり長期間にわたり継続することが重要です。
(4)については、初期段階のスタートアップが成功するのは創業者のおかげであるケースが多いと思いますが、IPO後も含め大企業が成功を持続するのは企業文化のおかけです。そのような優れた企業文化を持つ企業は、さらに優秀な人材を惹きつけることができます。IPO後は予測可能な一貫性を要求されますので、それを実現できる企業文化を作っていく必要があります。
(5)については、IPO前はVCなどの投資家は高い成長を期待しているので、投資家から調達した資金を積極的に投資をして赤字を継続しても売上の成長を目指すことが多いと思います。IPO後は成長だけではなく、利益を出すことを投資家から要求されます。IPO前は投資家は「夢を買っている」が、IPO後の投資家は「成果を求めている」と言えるかもしれません。IPOや利益から調達した資金を何にどう使うかという能力は、投資家が期待している成果を実現するために重要なものとなります。
(6)については、会社が正しい方向で運営されるための仕組みであるガバナンスが重要となります。企業がIPOすると投資家から短期的な利益や株価に対する要求が強くなります。持続的に成長する企業は、そのような短期的な要求には振り回されず、新規事業や研究開発のような将来の成長につながる投資を継続できるガバナンスを持っています。

CVCにおいても、上記のような視点は重要です。持続的に成長するスタートアップに投資をしなければ、財務リターンだけではなく戦略リターンの実現も難しくなります。(2)と(3)については、親会社のリソースを活用して投資先のプロダクト・マーケット・フィットを強化したり、ユニットエコノミクスを改善することを支援できる可能性があります。親会社が上場会社であれば他の点についても何らかの支援ができる可能性もあり、投資先とは戦略的価値が交換できる対等なパートナーとして長期的に連携できる関係であることが重要です。