海外のVCでは旗艦ファンドの他に追加投資用のファンドとしてオポチュニティ・ファンドが組成されることがあります。これは過去の投資先の中で成長過程にあるレイトステージの企業に対して追加投資をするもので、LPにとっては黒字化目前やIPO直前の成長企業へのエクスポージャーを増やすというメリットがあります。日本でも少し事例は出てきているようです。
CVCにおいても、追加投資も含めて投資(出資)という形態をどう進化させていくかという点について検討することは重要です。段階的な投資の進化について考えるために投資の形態を下記の4つに分けて考えてみます。カッコ内は持株比率のイメージです。
(1) 投資前(0%)
(2) 小口分散投資(少数株主)
(3) 重点投資(主要株主)
(4) M&A(100%)
(1)→(2)は通常のCVCの投資は該当します。基本的にはリードはとらずにフォロワーとしてマイノリティ投資を実行し、大きな資本の投入を行うことなく戦略的知見を獲得することが大きな目的となります。そのために、ここでは取締役派遣などのガバナンスにかかわる主要な権利確保はしませんが、情報開示請求権(Information Right)を確保して投資先の財務情報も含めた内部情報を入手することが重要です。オブザーバ指名権(Observation Right)を確保するケースもあるかもしれません。持株比率を変えないという意味ではプロラタベースの追加投資もここに該当するかと思います。CVCとして親会社との協業を模索できるケースでは、POCなどを通じて技術的な適合性や戦略的な関連性を検証することができます。そうではないケースでも、この段階では新しい市場や技術に関する戦略的知見の獲得し、親会社にとって将来の戦略的選択肢を確保することに焦点を当てることになります。その戦略的選択肢の一部となる(3)や(4)への移行を視野に入れて、投資先のプロダクト・マーケット・フィット、企業文化の整合性、統合の難易度などを観察することができます。
(2)→(3)は、持株比率をさらに上げるような大口の追加投資をすることを意味しています。これは(2)の状態にある投資先とより重要な関係を構築するための追加投資となり、その投資先が親会社の顧客となる、あるいはその逆に親会社がその投資先の顧客になるということも含めいろいろな関係が想定されます。親会社の事業規模の関係からこの投資は比較的レイトステージの投資先に対して行われることが多くなり、そのスタートアップが順調に成長している場合にはバリュエーションが高くなり、多額の資金を必要とするケースもあります。この投資ではリードインベスターとして取締役を派遣するなど、投資先のガバナンスに強く関与するケースも出てくるかと思います。この投資は親会社の現在の事業に近い領域で行われることが多いため、親会社のビジネスユニットとの密な連携の中で実行されることが多くなり、商業的関係において独占的な優先権を確保したり、(4)への移行を考慮してM&Aに関する優先権を確保することも考えられます。
(2)→(4)あるいは(3)→(4)では、(2)や(3)の段階でM&Aに向けた事前調査を実施した上で統合リスクが十分低減していると判断し、その関係を発展させて投資先を親会社のグループに迎え入れるということになります。M&Aには親会社のビジネスの対象市場を拡大したり、新しいビジネスを創出したりするものもあれば、技術や人材の獲得を目的に行われる場合もあるかと思いますが、いずれにしても親会社のビジネスユニットとの密な連携の中で行われることになります。
もちろん、(1)→(3)や(1)→(4)のケースもあるかと思いますが、(2)を経由することによりそのパイプラインを強化するとともに内部情報を入手しながら投資をどのように進化させるのか事前調査することも可能となります。CVCをこのような段階的な投資の進化という観点で位置付けることも意味のあることではないかと思われます。
CVCにおける段階的投資

